今回ご紹介する一冊は、
キャロライン.B.クーニー(Caroline B. Cooney )作
「The Face on the Milk Carton」です。
もし、自分の親が実の親でないと知ったら、
あなたはどうするでしょうか?
実の親を探したいと思うでしょうか?
それとも、今の親と共にいたいと思うでしょうか?
今回の一冊は、自分が誘拐犯に育てられたんじゃないかと気づいた少女の、
愛と葛藤の物語です。
あらすじ
15歳のジニーは、両親のもとで何不自由なく暮らしてきた。
けれど、ある日彼女は牛乳パックに描かれた「行方不明の3歳の少女」を見て、それが自分だと気づく。
……自分の親が誘拐犯であるはずがない。そう思っていたジニーだったが、次第に色々と不審なことに気づいてゆく。
思い返せば、家には3歳以前の写真が一枚もない。
…カメラを持っていなかったとしても、一枚もないのはおかしいんじゃないか?
また、ジニーはパスポートを更新するため、親に出生届を見せて欲しいと頼むと、普段は全く声を荒げない母親が、ひどく怒り出した。
…なぜそこまで怒るの?もしかして、何かを隠しているの…?
彼女の中で次第に疑念は大きくなっていき……。
背景
主人公・ジニーが牛乳パックに印刷された子供のポスターを見つけるところから物語は始まるのですが、実はこの牛乳パックに誘拐された子供の写真を載せるのは、アメリカで本当にあった制度らしいです。
1980年初頭に始まったミルク・カートン広告は、失踪・行方不明の子供の写真と詳細を人々が毎朝目にするであろう牛乳パックに印刷するというシステムです。
実際にこの広告のお陰で誘拐された子供を見つけ出せた例もあり、非常にシンプルながら効果的なアイデアだと思います。
この広告はインターネットやラジオが普及するにつれて1990年ごろには無くなったそうです。
SNSやスマホがない時代で、アメリカの広大な土地から失踪した子どもを見つけ出すために考えだされたアイデアは、とても斬新だと思います。
参考記事:https://www.imishin.jp/bony-yukuefumei/
作者情報
キャロライン・B・クーニーは、ヤングアダルト向けの恋愛、サスペンス、ホラー、ミステリなどさまざまなジャンルを扱っているアメリカ人作家です。このジニー・シリーズはもちろん、タイムトラベルものやファンタジーなどもあって面白いです。
彼女の作品は構造がシンプルで読み始めやすいのが一番の特徴だと感じます。
人物の視点が急に変わったり、第三者目線での描写が少ないので、「一人の人物の心情、思考」に集中できます。
気軽に何かを読みたい、と思ってる時におすすめです。
読んだ感想
15歳で自分が誘拐された子供だと知ってしまったら、どう行動するだろうか、とかなり考えさせられる話でした。
普通、誘拐されたら誘拐犯にひどく扱われるというのをイメージしますが、
ジェニーの場合、「愛情を受けて育ててくれた両親が実は誘拐犯かも知れない」と気づくわけですからかなりショックだったと思います。
事実を知った後でも同じように親子として暮らしていけるのか?
それとも、生みの親のもとに戻るべきなのか?
そもそも、生みの親のもとに戻ったところで彼らと「家族」として生きていけるのか?
…などと、色々なことを考えさせられました。
特に映画・ドラマ化された作品「八日目の蝉」を思い出しました。
軽く紹介すると、会社の上司と不倫をしていた女性が、上司の生まれたばかりの子供を連れ去って、我が子として育てながら逃亡する話です。
八日目の蝉は誘拐犯(=育ての母親)目線で描かれているのが印象的です。
ずっと実の親が他人だと知った時のショックと、本当の家族が「他人」に思えてしまう悲しさなど、子供目線の描写も多いです。生みの親からしたら、子供が誘拐された上に、実の子が帰ってきても「親」として認識してもらえないのは想像できないほど苦しいことだと思います。
映画・ドラマ共に観ましたが最後の最後まで育ての母親を「なんなんだこの人」と思ってしまってましたが……。
また、似たようなテーマで「パラサイト」という映画もあります。これはあまりいうとネタバレになるのですが、「虐待された子供は実の親と育ての親、どちらが良いか」みたいな話があるので興味深いです。
これらの映画が好きな方にぜひお勧めしたい一冊です。もちろん、観ていない方も、合わせてみると一層楽しめると思います。
まとめ
自分の親が誘拐犯かも知れない、と気づいた少女・ジニーの葛藤を描いた物語、「The Face On The Milk Carton」でした。
育ての親と生みの親という問題はすごく複雑で嬉しくも悲しくもある物語だと思います。
誰目線から話を考えるかで随分解釈が変わってきそうなのもまた、特徴的です。
皆さんもぜひ、「The Face on the Milk Carton」を手にとって頂けたらと思います。
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