「The Fault in Our Stars」John Green著/がんを患った若い二人の物語



今日ご紹介する一冊は、

ジョン・グリーン(John Green)著

『The Fault in Our Stars』です。


あらすじ

肺がんを持つ16歳の少女、ヘイゼル・ランカスター。甲状腺がんが肺に転移して、3年間も酸素ボンベが手放せないまま治療を続けている。

彼女は片足を失った少年、オーガスタス・ウォーターズと出会い、二人は互いに惹かれあっていきます。しかし、彼らは同時に、若くして死と向き合う苦悩も抱えている。

辛い状況の中、人を愛することの喜びや苦しみを描く、少し切ない青春小説。


感想

とにかく切ない。読んでてもうしんどくなる。結構隠喩とかが多くて、一度読むだけだといまいちしっくりこないところが二度目に読むとじわじわと理解できてくる感じ。読むたびに「うぅぅ…」とうなってしまうような、とにかく面白いけどしんどい作品。

主人公・ヘイゼルの悩み

未完結の小説『The imperial affliction』

この作品の根幹となるのが、ヘイゼルの愛読書・「The imperial affliction(大いなる痛み)」です。この作品は特殊で、『主人公ががんにかかってから死ぬまでの一生を書いた小説』なのですが、最後の章の途中で文章が途切れたままの状態で出版されているのです。
それをヘイゼルは何度も何度も読み返しては、「この物語の続きはどうなってるんだろう…」と思いをはせています。

特に彼女が気になっているのが、「主人公の親はどうなったのか」ということ。
小説の中の主人公と、自分を重ね合わせて、『自分が死んでしまったら両親はどうなってしまうんだろう』と心配になるのです。

オーガスタスもその小説を読み、ヘイゼルと同じようなもやもやを抱えるようになります。
この共通の「もやもや」を持つことで二人の仲はすぐに深まっていきます。


アンネ・フランクとの対比

物語の途中で、ヘイゼルはアムステルダムにある『アンネ・フランクの家』を訪ねます。

はじめて読んだとき「ん?なぜアンネ・フランクの家?」と困惑したのですが、少し調べていくうちに「ああ…なるほど」と納得しました。


アンネ・フランクは第二次世界大戦中の、ユダヤ人迫害の被害者の一人です。

彼女は隠れ家の中で日々生活しながら、様々なことについて日記に記していました。彼女は15歳の時に強制収容所で命を落とし、父親のオットー・フランクだけが生き残りました。オットーはその後アンネが書いていた日記を出版し、それが今の「アンネ・フランクの日記」となっています。

ここで重要なのは、アンネ・フランクは若くして亡くなり父親だけが生き残った、という点です。ヘイゼルは15歳という若さで亡くなったアンネ・フランクと、癌でいつ命を落としてもおかしくない自分を重ねているのだろうと思います。


このアンネ・フランクとの対比といい、小説「The Imperial Affliction(大いなる痛み)」への執着といい、ヘイゼルは常に「自分が死んだ後に、残された人はどうなるのか」ということを心配しているのです。

オーガスタスの悩みとヘイゼルの悩みの対比

一方、青年・オーガスタスは「誰の記憶にも残らず忘れ去られること」が怖いといいます。

これに対してヘイゼルは「いつか地球は滅びて、ゴッホやクレオパトラすらも忘れられて、彼らを記憶する人すらいなくなってしまう」と諭します。この話はとても対照的というか、オーガスタスとヘイゼルは似ているようで価値観は全くの正反対であるということがわかるのです。

オーガスタスは「たくさんの人に覚えていてもらいたい、忘れられることは怖い」と考える中、ヘイゼルはむしろ「自分の存在を忘れてほしい、自分の死で誰かを傷つけたくない」と思ったのではないかと思いました。



作者情報

ジョン・グリーン(John Green)は、アメリカ合衆国インディアナ州に生まれた作家であり、彼の代表作には『The Fault in Our Stars(きっと、星のせいじゃない)』や『Paper Towns(ペーパータウンズ)』などがあります。

彼の作品は、若者たちが直面する現代社会の問題や複雑な感情をリアルかつ繊細に描写しています。

その中でも特に、キャラクターたちの会話や内面の描写が巧みで、遊び心があるところがまた面白くて、多くの読者層に人気です。


Author of The Fault in Our Stars, Looking for Alaska, and An Abundance of Katherines


映画化


映画化もされてます!




まとめ

ジョン・グリーンの代表作である「The Fault in Our Stars」。シニカルな会話文からロマンチックなシーンまで精巧に作りこまれていて、最後まで楽しみながら読めました。
皆さんもぜひ、「The Fault in Our Stars」を手に取っていただけたらと思います。

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