今回紹介する一冊は
マロリー・ブラックマン著
『Trust Me』です。
皆さんは、吸血鬼になったらまずなにをしますか?
急な体の変化に戸惑うでしょうか。それとも向上した身体能力で遊びまくるでしょうか。
私はとりあえず夜通し遊びまくります!
『Trust Me』は、事故的に吸血鬼になってしまった恋人二人の意識の違いを描くスリラーです。
あらすじ
主人公・ジェイナは17歳の少女。ジェイナは両親の反対を押し切って彼氏のアンドリューと二人きりで旅行に出ます。
彼らは旅先である青年の主催するパーティーにいきます。そこで勧められた飲み物を飲むと、彼らは気を失ってしまい…。
目を覚ますと彼らは吸血鬼に代わっていたのでした。
急なことに驚愕するジェイナですが、手に入れた力にアンドリューは次第に暴走していき…。
急遽吸血鬼となってしまった二人は、いったいどうなってしまうのでしょうか…?
感想
現代で、しかも事故的に吸血鬼になるって、なかなかない設定だなと思いました。
作者のマローリー・ブラックマンは特に黒人差別に関する作品を数多く執筆しています。
中でも『ノーツ・アンド・クロセス(Noughts and Crosses)』シリーズはフィクションでありながらとてもリアルな人種差別問題を描いた壮大な物語です。
マローリー・ブラックマンが魔法やヴァンパイアといったハイファンタジーを書くイメージがなかったので、「いったいどんな話になるんだろう?」と結構戸惑いました。
が、いったん読み始めると吸血鬼ものというファンタジー設定に反してかなりハードボイルドな物語でした。
人種差別とファンタジー要素の組み合わせ
主人公のジェイナは黒人女性で、彼氏のアンドリューは白人男性です。彼ら二人はとても仲がいいのですが、読み進めていくうちに細かい人種差別が明らかになっていきます。
まず、ジェイナがアンドリューの家族に挨拶に行くとき、アンドリューの家族はあからさまにジェイナを軽蔑するような行動をとります。それだけでも酷いのですが、悲しいのは味方になってくれるはずのアンドリューがその場面にいながらも何も言わないことです。
「いや、なんか言えよ」と読んでてイラっとする場面もたびたびあったりします。
人種差別とヴァンパイアってなかなか一緒に見ない組み合わせだなと思いました。
人種差別が実際に昔も今もある社会問題であるのに対して、ヴァンパイアがほぼ完全にファンタジーの世界のものだからでしょうか、この組み合わせは初めてみたのでとても新鮮で面白かったです。
作者情報
マローリー・ブラックマン(Malorie Blackman)はイギリス人の児童文学作家。2001年に人種差別を主題としたヤングアダルトシリーズ、『ノーツ・アンド・クロセズ(Noughts and Crosses)』を出版。
SFやファンタジーなど幅広いジャンルを通して人種差別、格差社会、反乱や革命などの社会的問題について執筆しています。
まとめ
恋人二人が吸血鬼に変えられて、戸惑いながらも生きてゆく、ハラハラする物語でした。
ファンタジーの中に現実的な社会問題の描写もあり、ヴァンパイアものの中では妙にリアルな話だとも思いました。
皆さんもぜひマロ―リー・ブラックマン『Trust Me』を手に取っていただけたらと思います。
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